2011年01月18日
1月の定例ゲーム
――第六ゲームは、始まりから銃撃戦だった。

スタートコールと同時に、俺は駆けだした。
俺のダッシュに発破をかけられ、身軽なアタッカーが二人続く。
ありがたい。俺の片足は以前事故で痛めていて、思うように動かないのだ。本格的なアタックをするのに、味方の存在は欠かせない。
フィールドの半ばまで駆け、そろそろ足を止めようかと思った矢先、突然正面から銃撃された。
俺と二人の仲間は、応射しながら木の陰に飛び込む。
向こうのチームも進軍が早い……。
前線の陣取り合戦は、五分五分と言ったところだった。

前線までついてきてくれたのは、皮ジャンを着たライフルマンと、フリースを着てMP7を持った身軽なアタッカーだった。
俺は味方の戦力を確認した後、銃を擦るほどを身をかがめて、敵の様子をうかがった。
ブッシュに身を隠した影が見える。
――二人だ。
距離は100mほどあるだろうか。向こうの銃撃も届かないが、こちらの弾も届かない。
「数の上ではこちら有利だが……」
真っ向から打ち合えば、勝てるだろう。だが、それではこちらの被害も必至だ。出会いがしらの撃ち合いで、こちらの居場所も割れている。
居場所が割れている……なら、それを利用するのも手、か?
「なあ、あいつらの側面まで回りこめるか?」
聞くと、二人は事もなげに頷いた。
頼もしい限りだ。
皮ジャンとフリースの二人が、足音をひそめてブッシュをまたいでいく。

二人の足音を背中に聞きながら、俺は敵に向かってライフルをぶっぱなした。
届かないことは分かっている。だが、俺がここで派手に撃つ限り、敵の注意はこちらへ向き続ける。二人が連中の側面を突くまでの間、ここで俺が一人三役を演じるわけだ。
多弾装マグが空っぽになるまで、トリガーを引き続けた。発射音が虚しい破裂音に変わり、地面に伏せてマグチェンジする頃には、奇襲部隊の足音はずっと遠ざかっていた。
あとは、二人の奇襲が成功することを祈るだけだ。
地面に伏せ、前方の敵を見失わないようにしながら、じっと息をひそめる。

味方の足音はもう聞こえなくなり、耳に痛いほどの静寂が、辺りに満ちていた。
小さく身じろぎすると、腹の下で枯れ葉が鳴った。気持ちを落ち着かせるために深く吸った息が、辺りに響いた。相手に聞こえてやしないだろうか、不安だ。
今、もし前方の二人が突撃してきたら、とてもじゃないが防ぎきれない。
こちらにまだ三人いるだろうと、敵が警戒しているうちは、そんな無茶はしないだろうが……。
緊張にせっつかれるように、時折トリガーを引いて、仲間の存在をアピールした。命がけの一人三役だ。
肌をぴりぴりさせるほどの緊張の中では、時間感覚など容易に狂う。
奇襲部隊が回り込んでから、もう数時間も経っている気がした。未だ、敵の側面を銃弾が襲う気配はない。
突然、敵が一人飛び出した。

俺は慌てて狙いを定め、トリガーを引いた。倒せないまでも、すぐ近くのブッシュに釘づけにする。
奇襲部隊が追い立てたのか?
危険を覚悟で頭を上げる。100mほど先のブッシュには、敵が二人、相変わらずじっと身をひそめていた。すぐ近くのブッシュには、さっき釘づけた敵が一人……。
俺は慌てて伏せた。なんてこった。
さっき飛び出したのは新手だ!
これで、向こうの人数は三人。連中がまだ、俺のところに三人固まっていると思っていたとしても、戦力はイーブンになった。
実際に攻め込まれたら、三対一だ。勝てるはずがない。
退くか?
いいや。奇襲部隊は、俺がここにいることを期待して敵を追い立てるのだ。もし俺がここから離れれば、奇襲部隊は敵陣のど真ん中に取り残されることになる。
なら、一か八かの突撃?
いいや。それは最悪だ。俺が早々にやられ、奇襲部隊も囲まれてやられる。前線部隊は全滅だ。攻めを失ったチームに勝機はない。
――がさっ。
背後の茂みが動いた。反射的に、俺は銃口を後ろへ向ける。
茂みを掻きわけて現れたそいつは、ギリースーツの袖の中で親しげに片手をあげた。
味方だ!
前線の戦況を心配して、後衛がひとり、こっちに加わってくれたのだ。
援軍の手に下げられているのは、大口径のスコープを乗せ、サイレンサーを装備したAR。射程の長そうなやつだ。
これなら、前方のブッシュに釘づけにした敵を叩ける。

ARの、くぐもった発射音が響いた。前方の敵が追い立てられ、ブッシュから飛び出して退いて行く。
だが、逃げる敵の背中は、ここから丸見えだ。
俺は慎重に狙いを定め、トリガーを引いた。外すはずのない状況。
――だが。
がちっ。
トリガーに妙な抵抗があった。不穏な音が響いただけで、弾は発射されない。
「クソッ!」
トリガーの接点不良だ。何度トリガーを引いても、異音が響くばかりで弾が発射される気配はない。そのうちに、ARの射撃を逃れた敵がブッシュの向こうに消えていく。
ARの射撃音が、諦めたように止んだ。ARの射程で追えなくなった敵を、俺のライフルで追えるはずがない。
「マジかよ……」
恨みがましくライフルを叩くと、快音と共に弾が発射された。
手遅れも甚だしい。
先ほどの銃撃戦で、前方の敵は全員引いていた。一応進路は開けたようだ。

奇襲部隊との合流もしなければならないから、不安は残るが進むしかない。
ギリースーツが、俺の銃の不調を気遣って先導してくれた。
やがて近くの茂みが揺れて、奇襲部隊の二人が姿を現した。さっきの撃ち合いに間に合わなかったのは残念だが、生き残って合流してくれただけでも心強い。
敵の支配地域を進む危険な状況だが、心強い仲間たちとカバーしあうと、不安は格段に減った。さっきまで息をひそめていた分、揚々と進める足取りは軽い。
先導するのは奇襲部隊の二人、皮ジャンとフリースだ。射程の長いARを持ったギリースーツは、俺と一緒に後方を行く。
ふと、皮ジャンが素早く銃を持ち上げ、数発撃った。
「ヒット!」
声が上がる。さっき、俺の銃の不調で逃げられた敵だ。
さらに、フリースもスタンディングで素早く撃つ。
「ヒット!」
また声が上がった。さっき進路をふさいでいた二人のうち一人だ。
敵は、さっきの撤退で散り散りになったらしい。こちらが四人で各個撃破に回れば、敵に打つ手はない。
敵の脅威が薄れて、俺たちの足取りはより軽くなった。その後は大した戦闘もないまま、相手のフラッグが見える位置まで進軍することができた。
「そろそろ敵の防衛ラインだな……」
俺は、先導する二人に制止をかけた。
皮ジャンとフリースは足を止めて、中腰になって周囲をうかがう。敵影はなさそうだ。
俺も顔を上げて進路を見たが、50mほど先の小高い丘を越えれば、その先はすぐにフラッグだ。身を隠すブッシュも申し分ない。
こちらはまだ四人いる。多少の伏兵を覚悟したとしても、全員で駆ければフラッグは取れる……か?
今までの順調すぎる足取りが、軽はずみな判断を下させたことは否めない。
「もう少し、進んでみよう」
先導する二人が頷き、頭をあげた。
――瞬間。
「ヒット!」
戸惑うような声と共に、フリースが両手をあげた。
敵だ。しかし、どこから?
皮ジャンの動きは早かった。フリースの傍らからぱっと離れて、高台へ上る。フリースを撃った敵を見つけようと、皮ジャンは高台から目を凝らした。
俺は皮ジャンを注視した。方向さえ見定めてくれれば、俺とギリースーツで何とかできる。
――しかし。
「ヒット!」
索敵を終えるより先に、皮ジャンが声をあげた。
やはり、発射音は聞こえない。敵の姿も見えない。
だが、皮ジャンの肩で跳ねた白い弾が、一瞬目の端に映った。
弾筋から、発射された方向を予測する。
「あの丘……か?」
フラッグを守るには、たしかに都合のいい場所だ。
しかし、丘からこちらまでは50m近くある。エアガンの射程ぎりぎりの距離だ。
それも、発射音が聞こえないことを考えると、おそらく単発で撃ってきている。
射程ぎりぎりから、マンターゲットに必中させてくる敵。

あの丘には、腕のいい狙撃手が潜んでいる……。
俺はギリースーツに指示して、そっと後ろへ下がった。
幸い、後衛の俺たちはスナイパーの射程外にいる。スナイパーの射角外に隠れて、俺とギリースーツは顔を見合わせた。
「向こうにスナイパーがいる。二人やられた」
俺が言うと、ギリースーツは頷いた。
「オレ、つっこみましょうか?」
ギリースーツが言った。確かに相手がスナイパーだけならば、一人が援護しながらもう一人が突っ込めば、フラッグを取ることができるだろう。あれだけ腕のいい狙撃手だ。後衛を一人で任されている可能性も十分にある。
なにより、ここで立ち止まっていてもジリ貧になるばかりだ。敵はどんどん集まってくるし、こちらのチームのフラッグだって今まさに狙われているかも知れない。
「よし、突っ込もう」
「わかりました」
ギリースーツが頷いた。俺はそれを手で制して、ライフルを地面に置いた。
「突っ込むのは、俺だ。こいつじゃまともに援護もできない」
フラッグを取るだけならば、銃の不調は関係ない。痛めた足でどこまで走れるかは分からないが、さっき敵を取り逃がした分くらいは、ここで取り返しておきたいじゃないか。
「援護は頼んだ」
ギリースーツは頷いた。心強いことだ。
なんせ、奴のARは射程が長い。
一度深呼吸して、身軽な身体で飛び出した。背後で響く、ARのくぐもった音に背を押されるように、俺は駆けた。
狙撃手のいる丘の前を駆け抜ける。背後で、弾が唸った気がしたが、定かじゃない。はっきりと分かるのは、俺の身体に当たらなかったということだけ。
フラッグがぐんぐん近づく。伏兵がいる様子はない。
足がもつれて、あごが上がる。だが、フラッグはもう目の前だ。
手を伸ばす。勝利に向かって。
あと三歩。
あと二歩。
あと……一歩!
――衝撃は、側面から襲ってきた。
厚いBDU越しでも痛いほどの威力を保ったBB弾が、フルオートで浴びせかけられる。
俺は、フラッグを、勝利を掴みかけた両手を、高々と空にあげた。
「ヒットォ!」
俺を倒した伏兵が、フラッグすぐ脇のブッシュから立ち上がる。

こんなに近くにいたというのに、立ちあがるまでどこに隠れていたかすら分からなかった。ここまで完璧にアンブッシュされたんじゃあ、俺に続いてヒットされたギリースーツのことを責めるわけにはいかないだろう。
結果は、全滅でうちのチームの負け。
至近距離から撃たれた腕が、まだ少し痛んだ。全く、待てる強さってやつを、文字どおり痛感させられたゲームだったな。
…………
祝! ガンカメラ導入記念!
ということで、長々とお付き合いありがとうございます。そしてあけましておめでとうございます。
Laiceです。
去る1月8日、SPFフィールドにてゲームを行いました。
今回は、ウグイス隊長とサラサ隊員を除くメンバー全員が不参加。
その代わり、20名近い新人の皆さんが集まってくださり、いつも以上ににぎやかなゲームとなったそうです!
……なったそうです、というのはほかでもない。
このわたし、Laiceも、今回のゲームには参加していないのです。
しかし今回は、すばらしい秘密兵器が導入されました!
それがガンカメラです! ライフルのレールにポン付けすることで、ゲームの様子を克明に記録することができる文明の利器!
今回は、わたし自身が現場にいなかったこともあり、リーダーのG36Cに取りつけたガンカメラの映像を元に、主観視点ふうのゲームレポートにしてみました。

視点人物・ウグイス隊長
この日は、全部で10戦やったのだそうですが、今回レポートに起こしたのは6戦目のみ。みんなの身体がいちばん暖まってきた頃の、ガンカメラの録画時間が最も長かった一戦だけをピックアップしてみました。
むろん、文章化するに当たって、多少の脚色、及び事実とは違う演出も挿入しておりますが……その辺はご了承くださいませ。
今後はこうして文章化するだけではなく、実際に動画としてアップできればいいな……なんてことも考えております。
まだまだカメラの扱いさえままならず、動画アップへの道は険しいですけれど……。
そんな感じで。
今回は主観視点ふうのレポートにしてしまったせいで、参加してくださった新人さんたちの中には描写できなかった方も多くいました。
そのため、最後にちょっとしたフォトギャラリーを入れて、今回の記事を終わらせたいと思います。
セーフティーゾーンにて



戦闘中






今回も沼の被害者が……。

文責・Laice@今回不在

スタートコールと同時に、俺は駆けだした。
俺のダッシュに発破をかけられ、身軽なアタッカーが二人続く。
ありがたい。俺の片足は以前事故で痛めていて、思うように動かないのだ。本格的なアタックをするのに、味方の存在は欠かせない。
フィールドの半ばまで駆け、そろそろ足を止めようかと思った矢先、突然正面から銃撃された。
俺と二人の仲間は、応射しながら木の陰に飛び込む。
向こうのチームも進軍が早い……。
前線の陣取り合戦は、五分五分と言ったところだった。

前線までついてきてくれたのは、皮ジャンを着たライフルマンと、フリースを着てMP7を持った身軽なアタッカーだった。
俺は味方の戦力を確認した後、銃を擦るほどを身をかがめて、敵の様子をうかがった。
ブッシュに身を隠した影が見える。
――二人だ。
距離は100mほどあるだろうか。向こうの銃撃も届かないが、こちらの弾も届かない。
「数の上ではこちら有利だが……」
真っ向から打ち合えば、勝てるだろう。だが、それではこちらの被害も必至だ。出会いがしらの撃ち合いで、こちらの居場所も割れている。
居場所が割れている……なら、それを利用するのも手、か?
「なあ、あいつらの側面まで回りこめるか?」
聞くと、二人は事もなげに頷いた。
頼もしい限りだ。
皮ジャンとフリースの二人が、足音をひそめてブッシュをまたいでいく。

二人の足音を背中に聞きながら、俺は敵に向かってライフルをぶっぱなした。
届かないことは分かっている。だが、俺がここで派手に撃つ限り、敵の注意はこちらへ向き続ける。二人が連中の側面を突くまでの間、ここで俺が一人三役を演じるわけだ。
多弾装マグが空っぽになるまで、トリガーを引き続けた。発射音が虚しい破裂音に変わり、地面に伏せてマグチェンジする頃には、奇襲部隊の足音はずっと遠ざかっていた。
あとは、二人の奇襲が成功することを祈るだけだ。
地面に伏せ、前方の敵を見失わないようにしながら、じっと息をひそめる。

味方の足音はもう聞こえなくなり、耳に痛いほどの静寂が、辺りに満ちていた。
小さく身じろぎすると、腹の下で枯れ葉が鳴った。気持ちを落ち着かせるために深く吸った息が、辺りに響いた。相手に聞こえてやしないだろうか、不安だ。
今、もし前方の二人が突撃してきたら、とてもじゃないが防ぎきれない。
こちらにまだ三人いるだろうと、敵が警戒しているうちは、そんな無茶はしないだろうが……。
緊張にせっつかれるように、時折トリガーを引いて、仲間の存在をアピールした。命がけの一人三役だ。
肌をぴりぴりさせるほどの緊張の中では、時間感覚など容易に狂う。
奇襲部隊が回り込んでから、もう数時間も経っている気がした。未だ、敵の側面を銃弾が襲う気配はない。
突然、敵が一人飛び出した。

俺は慌てて狙いを定め、トリガーを引いた。倒せないまでも、すぐ近くのブッシュに釘づけにする。
奇襲部隊が追い立てたのか?
危険を覚悟で頭を上げる。100mほど先のブッシュには、敵が二人、相変わらずじっと身をひそめていた。すぐ近くのブッシュには、さっき釘づけた敵が一人……。
俺は慌てて伏せた。なんてこった。
さっき飛び出したのは新手だ!
これで、向こうの人数は三人。連中がまだ、俺のところに三人固まっていると思っていたとしても、戦力はイーブンになった。
実際に攻め込まれたら、三対一だ。勝てるはずがない。
退くか?
いいや。奇襲部隊は、俺がここにいることを期待して敵を追い立てるのだ。もし俺がここから離れれば、奇襲部隊は敵陣のど真ん中に取り残されることになる。
なら、一か八かの突撃?
いいや。それは最悪だ。俺が早々にやられ、奇襲部隊も囲まれてやられる。前線部隊は全滅だ。攻めを失ったチームに勝機はない。
――がさっ。
背後の茂みが動いた。反射的に、俺は銃口を後ろへ向ける。
茂みを掻きわけて現れたそいつは、ギリースーツの袖の中で親しげに片手をあげた。
味方だ!
前線の戦況を心配して、後衛がひとり、こっちに加わってくれたのだ。
援軍の手に下げられているのは、大口径のスコープを乗せ、サイレンサーを装備したAR。射程の長そうなやつだ。
これなら、前方のブッシュに釘づけにした敵を叩ける。
ARの、くぐもった発射音が響いた。前方の敵が追い立てられ、ブッシュから飛び出して退いて行く。
だが、逃げる敵の背中は、ここから丸見えだ。
俺は慎重に狙いを定め、トリガーを引いた。外すはずのない状況。
――だが。
がちっ。
トリガーに妙な抵抗があった。不穏な音が響いただけで、弾は発射されない。
「クソッ!」
トリガーの接点不良だ。何度トリガーを引いても、異音が響くばかりで弾が発射される気配はない。そのうちに、ARの射撃を逃れた敵がブッシュの向こうに消えていく。
ARの射撃音が、諦めたように止んだ。ARの射程で追えなくなった敵を、俺のライフルで追えるはずがない。
「マジかよ……」
恨みがましくライフルを叩くと、快音と共に弾が発射された。
手遅れも甚だしい。
先ほどの銃撃戦で、前方の敵は全員引いていた。一応進路は開けたようだ。

奇襲部隊との合流もしなければならないから、不安は残るが進むしかない。
ギリースーツが、俺の銃の不調を気遣って先導してくれた。
やがて近くの茂みが揺れて、奇襲部隊の二人が姿を現した。さっきの撃ち合いに間に合わなかったのは残念だが、生き残って合流してくれただけでも心強い。
敵の支配地域を進む危険な状況だが、心強い仲間たちとカバーしあうと、不安は格段に減った。さっきまで息をひそめていた分、揚々と進める足取りは軽い。
先導するのは奇襲部隊の二人、皮ジャンとフリースだ。射程の長いARを持ったギリースーツは、俺と一緒に後方を行く。
ふと、皮ジャンが素早く銃を持ち上げ、数発撃った。
「ヒット!」
声が上がる。さっき、俺の銃の不調で逃げられた敵だ。
さらに、フリースもスタンディングで素早く撃つ。
「ヒット!」
また声が上がった。さっき進路をふさいでいた二人のうち一人だ。
敵は、さっきの撤退で散り散りになったらしい。こちらが四人で各個撃破に回れば、敵に打つ手はない。
敵の脅威が薄れて、俺たちの足取りはより軽くなった。その後は大した戦闘もないまま、相手のフラッグが見える位置まで進軍することができた。
「そろそろ敵の防衛ラインだな……」
俺は、先導する二人に制止をかけた。
皮ジャンとフリースは足を止めて、中腰になって周囲をうかがう。敵影はなさそうだ。
俺も顔を上げて進路を見たが、50mほど先の小高い丘を越えれば、その先はすぐにフラッグだ。身を隠すブッシュも申し分ない。
こちらはまだ四人いる。多少の伏兵を覚悟したとしても、全員で駆ければフラッグは取れる……か?
今までの順調すぎる足取りが、軽はずみな判断を下させたことは否めない。
「もう少し、進んでみよう」
先導する二人が頷き、頭をあげた。
――瞬間。
「ヒット!」
戸惑うような声と共に、フリースが両手をあげた。
敵だ。しかし、どこから?
皮ジャンの動きは早かった。フリースの傍らからぱっと離れて、高台へ上る。フリースを撃った敵を見つけようと、皮ジャンは高台から目を凝らした。
俺は皮ジャンを注視した。方向さえ見定めてくれれば、俺とギリースーツで何とかできる。
――しかし。
「ヒット!」
索敵を終えるより先に、皮ジャンが声をあげた。
やはり、発射音は聞こえない。敵の姿も見えない。
だが、皮ジャンの肩で跳ねた白い弾が、一瞬目の端に映った。
弾筋から、発射された方向を予測する。
「あの丘……か?」
フラッグを守るには、たしかに都合のいい場所だ。
しかし、丘からこちらまでは50m近くある。エアガンの射程ぎりぎりの距離だ。
それも、発射音が聞こえないことを考えると、おそらく単発で撃ってきている。
射程ぎりぎりから、マンターゲットに必中させてくる敵。
あの丘には、腕のいい狙撃手が潜んでいる……。
俺はギリースーツに指示して、そっと後ろへ下がった。
幸い、後衛の俺たちはスナイパーの射程外にいる。スナイパーの射角外に隠れて、俺とギリースーツは顔を見合わせた。
「向こうにスナイパーがいる。二人やられた」
俺が言うと、ギリースーツは頷いた。
「オレ、つっこみましょうか?」
ギリースーツが言った。確かに相手がスナイパーだけならば、一人が援護しながらもう一人が突っ込めば、フラッグを取ることができるだろう。あれだけ腕のいい狙撃手だ。後衛を一人で任されている可能性も十分にある。
なにより、ここで立ち止まっていてもジリ貧になるばかりだ。敵はどんどん集まってくるし、こちらのチームのフラッグだって今まさに狙われているかも知れない。
「よし、突っ込もう」
「わかりました」
ギリースーツが頷いた。俺はそれを手で制して、ライフルを地面に置いた。
「突っ込むのは、俺だ。こいつじゃまともに援護もできない」
フラッグを取るだけならば、銃の不調は関係ない。痛めた足でどこまで走れるかは分からないが、さっき敵を取り逃がした分くらいは、ここで取り返しておきたいじゃないか。
「援護は頼んだ」
ギリースーツは頷いた。心強いことだ。
なんせ、奴のARは射程が長い。
一度深呼吸して、身軽な身体で飛び出した。背後で響く、ARのくぐもった音に背を押されるように、俺は駆けた。
狙撃手のいる丘の前を駆け抜ける。背後で、弾が唸った気がしたが、定かじゃない。はっきりと分かるのは、俺の身体に当たらなかったということだけ。
フラッグがぐんぐん近づく。伏兵がいる様子はない。
足がもつれて、あごが上がる。だが、フラッグはもう目の前だ。
手を伸ばす。勝利に向かって。
あと三歩。
あと二歩。
あと……一歩!
――衝撃は、側面から襲ってきた。
厚いBDU越しでも痛いほどの威力を保ったBB弾が、フルオートで浴びせかけられる。
俺は、フラッグを、勝利を掴みかけた両手を、高々と空にあげた。
「ヒットォ!」
俺を倒した伏兵が、フラッグすぐ脇のブッシュから立ち上がる。
こんなに近くにいたというのに、立ちあがるまでどこに隠れていたかすら分からなかった。ここまで完璧にアンブッシュされたんじゃあ、俺に続いてヒットされたギリースーツのことを責めるわけにはいかないだろう。
結果は、全滅でうちのチームの負け。
至近距離から撃たれた腕が、まだ少し痛んだ。全く、待てる強さってやつを、文字どおり痛感させられたゲームだったな。
…………
祝! ガンカメラ導入記念!
ということで、長々とお付き合いありがとうございます。そしてあけましておめでとうございます。
Laiceです。
去る1月8日、SPFフィールドにてゲームを行いました。
今回は、ウグイス隊長とサラサ隊員を除くメンバー全員が不参加。
その代わり、20名近い新人の皆さんが集まってくださり、いつも以上ににぎやかなゲームとなったそうです!
……なったそうです、というのはほかでもない。
このわたし、Laiceも、今回のゲームには参加していないのです。
しかし今回は、すばらしい秘密兵器が導入されました!
それがガンカメラです! ライフルのレールにポン付けすることで、ゲームの様子を克明に記録することができる文明の利器!
今回は、わたし自身が現場にいなかったこともあり、リーダーのG36Cに取りつけたガンカメラの映像を元に、主観視点ふうのゲームレポートにしてみました。
視点人物・ウグイス隊長
この日は、全部で10戦やったのだそうですが、今回レポートに起こしたのは6戦目のみ。みんなの身体がいちばん暖まってきた頃の、ガンカメラの録画時間が最も長かった一戦だけをピックアップしてみました。
むろん、文章化するに当たって、多少の脚色、及び事実とは違う演出も挿入しておりますが……その辺はご了承くださいませ。
今後はこうして文章化するだけではなく、実際に動画としてアップできればいいな……なんてことも考えております。
まだまだカメラの扱いさえままならず、動画アップへの道は険しいですけれど……。
そんな感じで。
今回は主観視点ふうのレポートにしてしまったせいで、参加してくださった新人さんたちの中には描写できなかった方も多くいました。
そのため、最後にちょっとしたフォトギャラリーを入れて、今回の記事を終わらせたいと思います。
セーフティーゾーンにて
戦闘中
今回も沼の被害者が……。
文責・Laice@今回不在